近年では、口内環境や口腔機能が様々なリスクを引き起こすことがわかってきました。運動や食事制限を頑張っているのになかなか痩せられないなんてことはありませんか?
もしかしたらそれは口腔フレイルが関係しているかもしれません。口腔フレイル(オーラルフレイル)になってしまうと、生活習慣病の代表である糖尿病になるリスクや認知症になるリスクも上がるといわれています。
ここでは、口腔フレイルについての解説と改善するだけで痩せることができる、リハビリの治療の観点から紹介していきたいと思います。
そもそも口腔フレイル(オーラルフレイル)ってなんだろう?
フレイルとは、「加齢とともに心身が衰え、社会的なつながりが減少する」ことを指します。フレイルという言葉自体は、「虚弱」を意味する言葉です。
筋肉の衰えの他に、精神的なものも含まれています。「加齢ととともに心身が衰え・・・」とありますが、年齢に関係なくフレイルになっているかもしれません。
口腔フレイル(オーラルフレイル)とは、歯や口腔機能が弱くなり”かたいもの”が噛めないなどから、”柔らかいもの”ばかりを摂取するようになり、どんどん機能低下していく状態を指します。
その中には、虫歯や歯周病といったことが原因の一つだったりします。
フレイルを構成する3つの要素
フレイルになる原因は3つの要素に分けられます。
・筋肉等を中心とした身体的な衰え
・認知機能やうつといった心理・精神的な衰え
。独居・貧困・引きこもりといった社会性の衰え
上記のような状態の中で2つ以上当てはまるとフレイルの可能性があります。
チェック項目は以下のようなものがあります。
項目 | 評価基準 |
体重の減少 | 半年で2kg以上の意図しない体重減少 |
筋力低下 | 握力:男性<28kg、女性<18kg |
疲労感 | ここ2週間理由もなく疲れた感じがする |
歩行速度の低下 | 歩く速さが一秒あたり1m下回る |
身体活動 | 軽い運動や定期的な運動のいずれも週一回未満も場合 |
現在自分がどうなのか振り返ってみてください。
口腔フレイル(オーラルフレイル)と認知症の関係
歯科と認知機能のは深く関係していることが報告されています。
約1500名を対象としたTakeuchiらの5年間の前向きコホート研究で、現在歯数が少ないほど認知症の発症リスクが高くなると報告されています。さらに、約4400名を対象としたYamamotoらの4年間の前向きコホート研究では、現在歯数がほとんどなく義歯も未使用の者は、現在歯数が20本以上の者と比較して認知症発症リスクが約1.9倍高くなると報告されています。その一方で現在歯数が少なくても義歯を使用する事で、認知症の発症リスクを下げることができる可能性があると報告されています。
フレイルを構成する3つの要素の中にある身体的衰えがあるように、口腔機能がフレイルに陥ると認知症になるリスクがかなり上がることがわかります。
様々な要因で、歯が抜けることがあります。年齢は若いといって放置しておくと後々、認知症などを発症する可能性があるため、定期的に歯科受診でのメンテナンスをお勧めします。
口腔フレイル(オーラルフレイル)とダイエットの関係
意外とみんな気にしていない、口腔機能がダイエットにとても重要なります。
痩せるにはやっぱり食事制限と運動でしょ?と思う方も多いと思います。もちろんダイエットを行う上ではとてもその二つも重要です。
歯科医師会の研究によると、口腔機能が低下すると、よく噛まずに摂取することが多くなります。何気なく食事量を制限したとしても咀嚼回数が減少すると唾液の分泌も減少し、口腔内の殺菌作用も減少します。さらに、よく噛んで食事を摂取する人としない人では、よく噛む人の方が食事後の代謝が向上し、太らなかったという結果が出ています。
口腔内の清潔に保つことができないと、細菌とともに食物を飲み込むことになります。その飲み込んだ細菌が体調不良の原因となったり、身体の多くの代謝を担う肝臓への負担や肝機能へ影響を及ぼすこともあります。結果、代謝に異常が発生し脂肪肝の原因に繋がることもあります。
※脂肪肝について、さまざまな原因があります。参考程度に読んでいただけると幸いです。
どんなに食事制限や運動をしてもぽっこりお腹のままなのは、口腔内に原因があるかもしれません。
口腔フレイル(オーラルフレイル)を予防するには
口腔フレイルを予防するためには、いくつかの方法があります。
そのうちの一つに口腔体操があります。
上の画像のように、大きく「あ」、「い」、「う」最後に「ベー」と舌を出します。
上の画像のようにほっぺで風船をします。
その他には、耳下腺マッサージ、顎下線マッサージなどがあります。
虫歯や歯周病になった際には放置せず、歯科受診をお勧めします。妊娠や出産で歯が抜ける方もいるので、その際は必ず歯科受診をすることをお勧めします。
歯がしっかり揃っている方でも、月1回のペースで歯のメンテナンスをするといいでしょう!
日常生活を支援する作業療法士の治療的観点から見る口腔機能の重要性
作業療法士は、対象の方のADL(日常生活活動)を主に支援をする職業でもあります。何らかの疾患で寝たきりになってしまった時に、状態にもよりますが必要になってくるのが食事です。
それぞれの考え方や、治療方針もありますが私セロリンが重要と考えている順番でも食事が1番です。2番目が排泄です。そして最後に優先して行うのが口腔ケアです。
口腔ケアを重視することの一つとして、口内が細菌だらけの状態で食事を摂ると細菌も一緒に体内へ入ったしまいます。さらに、口腔機能が低下していくと誤嚥性肺炎のリスクも上がります。口腔ケアがしっかりできていると感染症のリスクも低下します。
例えば、家族の一人がインフルエンザに感染したとします。その時にそばで看病している人がインフルエンザに感染しない場合ってありませんか?
それは、歯磨きなどの口腔ケアをしっかりしていることが感染しなかった理由の一つとして挙げられます。
中には見落とす方もいるかもしれませんが、ADL(日常生活活動)の整容は生活する上でとても重要な項目の一つです。
まとめ
口腔フレイル(オーラルフレイル)を防ぐだけで、肥満の防止、認知症の防止、感染症の防止などかなりのリスク回避ができることがわかりました。今回は糖尿病については、書いていませんが生活習慣病になるリスクが高いことも報告されています。
糖尿病については、別の記事で紹介していきたいと思います。
歯は一度失うと再生しません。いつまでも、丈夫な歯で過ごせるように、定期的に歯科受診を行いメンテナンスをしてみてください。
そして、これを機に自身の歯磨きなどを見直してみてはいかがでしょうか?
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